「基本四単語」

音韻[004]___

 

◇「声から言葉へ

 家族の間だと「あれ」や「それ」といった言葉で意図が通じる事もありますよね。しかし、他人に対してはあまり役に立たない。

初期の人類は、それ程多人数ではない一つのグループで暮らしていたと思われ、全体が一つの家族のようなものだったでしょう。

その段階では日常的に接している者同士であり、言葉に使われる音も、意思の疎通を図る上で最小限のもので良かったかも知れない。

 

また、キという一つの声であっても、ほんの僅かな抑揚や強弱の違いによって様々な意味を含ませる、という方向に発展し得るでしょう。

ところが人間の数は徐々に増え続け、集団も大きくなってくると、集落は自然に分離しグループ分けが成されてくる。距離ができる事でそれぞれの集団の中だけで使われるちょっとした音の違いも出てくる。

 

さらに、人の増加は個人の移動を促進させ、群れを出た者たちによって新たな家族が形成され始めます。

居住空間や環境が変わり、異なる群れの間にできる物理的距離は、言語にも僅かな距離を生じさせ、影響を及ぼし始めます。

それは、微妙な音の違いによる以心伝心にも似た遣り取りを不可能にさせ、そこに何かと齟齬が生じ始めます。

そこで意図をはっきり具体的に示すための言葉が必要になってきますが、キの声だけではもはや限界がやってくる。

 

 

◇「基本四単語の誕生

 キはk音であり、それまでも他のk音を発することもあったでしょうが、明確な声音として使うことはあまり無かったと思われます。

そんな中で次第に「カ」の音が、しっかりとした役割りを持った音として使われ始める。そして、キとカを組み合わせた単語が生まれます。

 キツキキツカカツキカツカ

これが人類の創り出した基本四単語です。さらに加えて、ア=大、ツ=小。また、ツツ=動き、ツ=停止。この四つの付属音を絡めて、様々なコトバが作られていった考えられます。

 

 

◇「基本四単語+四種附属音

 人類言語の大方がこの形で作られていると言っても過言ではない、と(密かに)思っています。ところが、その後の情報量の増加は益々激しく、k音もまた飽和の時がやって来る。

基本四単語はその後も変わることは有りませんが、声音は遂にk音を飛び出し始めます。

言葉の数は概念の数に比例します。そして、その事は脳の成長に於いて、極めて大きな影響を及ぼす事となるのです。

脳の発達が言葉を増やすのか、語彙の増加が脳の進化を促進させるのか。これはニワトリとタマゴではなく、同時進行と考えるべきでしょう。